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白血病になった社長 患者になって気付いたMRの課題

弊社代表の昌原が2012年に白血病になり2014年に社会復帰、闘病中の2年間を、
患者の視点から今の医療、病院についてありのままを伝えるレポート

第8回 まさかの病気

「何かおかしいぞ」
13年6月20日の退院の2~3日前のことでした。
朝起きると視界がモヤっとして見えません。
鏡を見ると右目の結膜が真っ赤に充血しているではありませんか。

当初は「結膜化出血」が疑われたものの、分院には眼科がないので予定どおり退院して地元の眼科を受診しました。
「ひどい炎症を起こしていますね。すぐ専門医にかかるように」

7月13日から移植のための入院が予定されていました。
それまではたまった仕事を片付けながら、その日を待ちました。
本院の眼科を受診したところ、サイトメガロウイルス(CMV)網膜症でほとんど右目が見えない状態でした。
多くの場合、移植後に起こる感染症のひとつですが、おそらく5回の化学療法で免疫力が極限まで低下して日和見感染を起こしたのでしょう。
日本では成人の約90%がCMVに潜伏感染していると言われ、抗がん剤や免疫抑制剤の投与、エイズなど著しく免疫が低下すると発症する(日和見感染)そうです。
CMV網膜炎は、網膜が壊死し失明に至ることもあります。

結局、7月13日に入院はしたものの移植は延期となりました。
「ガンシクロビル」(デノシン®、主な副作用:骨髄抑制)と「ホスカルネット」(ホスカビル®、同:腎障害)を使い分けながら2週間、CMV網膜症の治療に専念したのち、退院となりました。

移植の延期はショックでしたが、化学療法後に期せずして与えられた2ヵ月半の自宅療養は「移植前に体力をつけろ」と神様がくれた時間と前向きに受け止め、毎朝5時半に起きて3000~4000歩ほど歩いて体力回復に努めました。
それまで「どうやって歩かないで過ごすか」ばかりを考えてきた人間とは思えぬ勤勉さです。

一方、時間だけはあるので、骨髄バンクから届いた冊子をはじめさまざまな資料を読み漁っては、「ああ、やはり半分の人は死んでしまうのか」と再び絶望感に打ちひしがれる毎日でもありました。

ただし、移植を受ける・受けないの選択の余地などありません。
成人急性リンパ性白血病(ALL)で、しかもフィラデルフィア染色体陽性の場合は極めて再発率が高く、やがて抗がん剤に耐性ができて効かなくなってしまうからです。
しかし根っからのポジティブ思考である私は、そのような厳しい現実を突きつけられても不思議と自分が死ぬとは考えませんでした。

それは、資料に書かれているデータはいずれも分子標的治療薬が使われる以前の症例が含まれており、今はもっと治療成績はよくなっていると聞かされていたこと、1%でも可能性の高い治療があるならそれを選択しようと心に決めていたからです。

その病院では移植前に抗がん剤2種類と全身放射線照射(TBI)を行う強化骨髄破壊的前処置が採用されていたのですが、私の場合、CMV網膜症のこともあるので、抗がん剤1種類とTBIへの変更が検討されていました。

そこで友人に頼んで文献*を取り寄せたところ、一般にALLの5年生存率は50%弱ですが、中等量(30mg/kg)の「エトポシド+シクロホスファミド」(120mg/kg)+TBI(12Gy)の強化前処置を行うと、なんと3年生存率が89.2%にまで改善すると書かれているではありませんか。
一施設(37例)の報告に過ぎませんが、これほどまでに治療成績が違うのなら「ぜひ強化前処置をしてほしい」と頼み込み、結果的に私の希望が通ることになったのです。

*Shigematsu A et al.Biol Blood Marrow Transplant.2008 May-14(5):568-75.

医薬経済 2015/8/1

利用許諾番号Z32248

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