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白血病になった社長 患者になって気付いたMRの課題

弊社代表の昌原が2012年に白血病になり2014年に社会復帰、闘病中の2年間を、
患者の視点から今の医療、病院についてありのままを伝えるレポート

第10回 骨髄移植後の凄絶な日々

「急性リンパ性白血病でほぼ間違いがありません」
12年12月26日に、衝撃の宣告を受けてから10ヵ月が経っていました。
苦しい抗がん剤治療、思いもよらぬサイトメガロウイルス網膜症の発症など紆余曲折がありましたが、13年10月1日、ついに骨髄移植の日を迎えました。

「昌原さん、いよいよですね」
ひとりの医師が私のベッドサイドを訪れて、声を掛けてくれました。
私の気持ちは比較的冷静で、病室を見回しながら、こう心の中でこう呟いていました。
「同室の患者さんが移植を受けたときは複数の医師が立ち会っていたじゃないか」
寂しがり屋なのです(笑)。
でもそんな余裕もすぐに消えました。

いよいよ骨髄移植が始まるのですが、手術室などに移るわけではありません。
いつもの6人部屋の、いつものベッドの上です。
ドナーが善意で提供してくださった大切な骨髄バッグが運ばれてきました。
普通の点滴と違って処置はすべて医師が行います。

ポツリ、ポツリ。
骨髄1.3リットルが7時間半かけて、ゆっくりと落とされ、私の体内に入っていきます。
最後はバッグや管の内腔を生理食塩水で洗い流すようにして、骨髄を一滴も余すことなく、使い切りました。

「終わりました。疲れたでしょう」
医師の言葉に私は軽く頷きました。
しかし、お互い笑顔はありません。
これからが正念場と知っていたからです。

前処置で白血球数がほぼゼロになった状態から、移植された細胞が骨髄で白血球をつくり出すまでには時間が必要です。
その間、白血球が体内にほとんどない状態が2~3週間続きます。
つまり、移植後の1ヵ月くらいは、私の身体は完全に無防備な状態に置かれます。
その身体を容赦なく激痛が襲います。
まさに地獄のような日々でした。

前処置から続く下痢によって、肛門周りの痛みはすでに極限を超えており、ベッド上に座ることも困難な状況でした。
そのうえ、移植直後から急性GVHD(移植片対宿主病)を防ぐための免疫抑制剤「プログラフ」(タクロリムス)の投与が始まると、その副作用のせいか頻尿も加わって、トイレ通いは大だけで20回、小も入れると30~40回にも及びました。
下腹部や臀部は、横になっても痛みがあり、座っても痛みがあります。
トイレに行こうと立ち上がると痛みは一層激しくなり、歩行もままなりません。
しかも、下痢と頻尿が絶え間なく襲うことで、ゆっくり眠ることさえ許されないのです。

家族や友人も心配してくれたと思います。
しかし、このときの私は誰かを思いやる気など持てませんでした。

「抗がん剤の副作用のほうが、まだマシじゃないか」
骨髄移植に伴う副作用は予め聞かされていました。
私も薬剤師です。
文献を読んだりして、それなりに覚悟はしていましたが、下痢と腹痛、急激に催す尿意はいずれも想像の域を超えていたのです。

「昌原さん、きついでしょう。これを使ってください」
ポータブルトイレがベッドサイドに置かれました。
しかし、移動の苦しみと引き換えに“屈辱的”な思いを経験しました。

口内炎も凄惨を極めました。
口の中がカビが生えたように真っ黒になり、鏡で見ることも嫌になります。

想像を絶する辛さは必要以上に人の心をささくれ立たせます。
そんなときに、「カロナール」の服用に際して、懸命にケアしてくれている看護師さんと一悶着あったのです。

医薬経済 2015/9/1

利用許諾番号Z32248

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