白血病になった社長※ - 患者として人生に向き合う

※2015年当時。2016年1月より親会社ACメディカル(株)と経営統合し、現在はACメディカル(株)社長に就任

2012年の白血病発症後、社会復帰して5年。
その後も続く治療や新たな課題など患者の視点からありのままを伝えるレポートの第2弾

第6回 医療費負担と就労問題

あとになって聞いた話です。

会社の仲間によると、ロタウイルス感染が発覚する2~3日前、どうやら私は熱中症のようなだるさを訴えていたようなのです。
神経鞘腫のときに「早めの受診」という教訓を得たはずなのに、まったく反省していなかったのです。

ところで8月15日号では「3歳児並みの免疫力」だったことを紹介しましたが、「移植あるある」のひとつが予防接種のやり直しです。

じつは、ロタウイルスの感染より前、しかも退院後かなり早い段階で水疱瘡に罹りました。
私の場合、移植よりずっと以前に1度自然に罹患していますので、これで2度目です。
水疱瘡は1度感染すると免疫ができて2度と罹らないとされています。

「なるほど。骨髄が入れ替わったということはこういうことか」と妙に納得したのはこのときでした。

骨髄移植を受けると、移植前に罹患したり、予防接種で得られた免疫が低下したり失われたりする可能性があります。
そのため、白血病の治療を終えたあともフォローアップ外来に通い、スケジュールに沿ってワクチン接種を行うことが推奨されているのです。

一般に移植後6~12ヵ月以降で慢性GVHD(移植片対宿主病)の悪化が見られない場合に4種混合とHibワクチンの接種をスタートさせます。
移植後2年以降で免疫抑制剤を終了、慢性GVHDの悪化がなければ2種混合(麻疹、風疹)、おたふくかぜ、水疱瘡を体調とも相談しながら規定の回数、順次接種することとされています。

私も、ワクチン接種を待たずに罹ってしまった水疱瘡を除いて、移植からちょうど2年目の15年10月1日から4種混合とHibワクチンを3回ずつ、2年半後に2種混合、その2ヵ月後におたふくかぜの接種を受け、後日、抗体価を調べたうえで、おたふくかぜと風疹の追加接種を受けました。

しかし困ったことに、これらは赤ん坊とは違って公費助成がありません。
全額自己負担です。
十数万円ほどかかりました。

Ph陽性成人ALLは患者数が少ないとはいえ難病指定されているわけではありません。

例えば、私が服用している「タシグナ」は1カプセル約5000円、1日1万円。90日分の処方を受けるとそれだけで調剤薬局で30万円近くも払わなければなりません。
これは分子標的薬など比較的新しい薬全般に言えることですが、がんの治療は身体にばかりでなく、懐にもつらいものなのです。

患者個人の肩にかかって余りある「医療費負担の大きさ」も、現代医療が抱える課題のひとつです。
しかもここには多分に、がん対策基本法にも盛り込まれている「がん患者の就労問題」が絡んできます。
患者さんが集まる席でよく出る話題のひとつが「仕事のこと」です。
多くの方が、「もとの職場に戻れない」「治療との両立が困難」といった不安を抱えています。
がん患者を対象とした調査でも、がんに罹患したことで働き方を変えたり失職するなどして7割の人が収入が減ったとする報告があります。

私自身も移植を受けたあとは体力が落ちて、もとの生活に戻るのに2~3年ほどかかりました。
私が非常に幸運だったのは、社長を降ろされることも、報酬がカットされることもなかったことです。
治療費や家族を支える生活費、治療を終えたあとに戻る場所があるということはとても大事なことです。

がん患者の約3人に1人が就労可能年齢で罹患しているといわれる今、がん経験者が直面する就労に関する不安を払拭できるような社会基盤の整備を一層加速させる必要があるのを強く感じます。

医薬経済  利用許諾番号Z32248

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